社長の掟 著:吉越浩一郎 を読んで

社長の掟 著:吉越浩一郎 を読んで

初めに

看護師として働いている私は、社長さんって遠い存在、というイメージ。そして、一般的な企業の管理職の立ち位置のイメージも曖昧です。いや、そこまでは……言い過ぎだと…信じたい。
もちろん皆さんも知っていると思いますが、看護師にも師長、主任という管理職があります。あとは専門、認定看護師(糖尿病だったり、集中領域だったり専門分野を学んでスタッフの育成や患者さんのより良いケアをするための看護師さん)がいます。師長や主任、専門・認定看護師の上には更に看護部長がいます。いちスタッフとして働いていますが、イマイチ看護部長さんの働きや師長さんの働きはよくわかっていません。
そんなあたしなので、セミナーの課題図書として挙げられていなかったら多分手には取らない本だったかなと思います。デッドライン仕事術辺りはもしかしたら手にしていたかもしれませんが……

読んだ第一感想として。

書かれている社長像と自分の勤めている病院の管理職の方たちを当てはめてみました。自分の中の素直な感情として、色んな不満が沸き起こります。これが出来てないとか、こうしてくれたらもっと良いのに、とかそういう感情です。
(本を読む以前から)こんな病院辞めたい、なんて何回も思っています。転職してみようかな、っていうのも頭の隅っこにあります。
不満ばかり言って、どこの会社に転職しても、それが自分の理想の会社じゃないかもしれない、だったら自分が社長になったらいいんじゃないか、と初めのほうに吉越さんは書かれています。それが何よりも衝撃でした。
あなた自身の働き方を変えればいいのだ 。一番良いのは 、将来自分が社長になると心に決め 、それに合わせて今日から仕事の仕方や考え方を変えるのである
看護師になって9年目。過去に師長に今後どんな方向性で進むのか確認されたことがあります。その際言われたのが、看護師の方向性として、管理職になるのか、専門・認定看護師などの資格を持つ教育者になるか、どちらかしかない、ということでした。そのとき、あたしは責任が重すぎて、Drたちとも意見を言い合わなければいけない管理職には興味がないです、と答えたのです。何よりも自分の下につく、スタッフを守りきれる自信がなかったのです。仕事をしない、スタッフを守ってくれないとスタッフ全員が思っている、その看護部の管理職の一員となる、なんてとんでもないことでした。
だからこそ、吉越さんの、この言葉はとても心に沁みました。
現在社長でない人にとって 、いまという時間は 、社長になるためにせっかく与えられた準備期間なのである 。そう考えれば 、理不尽や不条理も自分を鍛えるための絶好の課題になる 。視野が狭く判断の遅い社長や 、リ ーダ ーシップのかけらもない上司だって 、クリアすべき障壁であり 、格好の反面教師に変化させるのである
ちょっとだけ、管理職に興味が湧きました。でもね、あたしはやっぱり、現場で患者さんが良くなったり、スタッフ同士で色んな工夫をしていけることがとても好きだし、教育者として、スタッフを育てていくのは自分の性格に合っているのかな、とも思いました。

リーダーシップ!はとても気になる部分。

病棟の看護師は、その勤務帯でリーダーを立てて動いているところが多いと思います。その病棟内でリーダーの立ち位置は変わってきますが、その勤務帯で先頭に立って周りを見て、動くリーダーさん。リーダーを取り始めるようになるのが2年目から3年目になります。そういうスタッフにリーダーシップとは何なのかを考えて動いてもらおう、という研修を企画、運営するポジションにひっそりあたしはいて、第1回目を5月にやりました。因みにリーダーを取り始めて数年経ったスタッフにはアサーティブコミュニケーションの研修、主任代行を務められるくらいのスタッフには看護部の理念を考えて自分の目標を考えてもらう研修も行っています。
5月に行った研修でアンケートを取って研修の評価や次回(今月の末に2回目を行います)の参考にしたのですが、そのときのアンケートに、リーダーシップを取るために自分には何を身につけたらいいのか、周りからの応援・支援はいるか、何が障害となるか、など問いを作ったのですが、支援も必要ないし、障害も今の所特記することがない、という回答がとても多かったのが印象的でした。
それは本人が本当に支援されていないと思っていたり、気づいていないのかもしれないし、そのスタッフを育てる立場の上司が的確なフィードバックを行えていないからなのかな、とも思えます。1人で仕事をしてリーダーシップを取れるようになるか、と言ったらそうではないでしょう。そんなリーダーになんて誰もついていきません。
そういう点で吉越さんが的確な表現をしているのが、ここだな、と思いました。
与えられた課題に対し 、完璧なものを提出できなかったとしたら 、その部下には資料の読み方か 、デ ータの集め方か 、関係者へのヒアリングの仕方か 、市場動向や商品力の認識か 、とにかく 、そのプロセスのどこかに甘い部分があるのである 。それは 、本人が気づいていないのかもしれないし 、自覚はあってもこの程度でいいだろうと高を括っているのかもしれない 。そして 、誰かに指摘されないかぎり 、その甘さはずっとそのままなのだ 。だから 、上司は部下の実力を見極め 、いまの力では少々手に余ると思えるような課題を与えるのである 。
何度も結果に戻り 、部下が自ら気づくまで辛抱強くつきあえるのが 、いい上司なのである 。これを上司がどこまで徹底できるかによって 、部下の成長速度が決まるといっても過言ではない 。
本当に重要なことは 、ほとんどが言葉にできない暗黙知の部分なのである 。それは 、本人が気づき 、自分で身につけていくよりほかないのだ 。

経験し、本人が気づいて、身につけていくしかない。けれど、上司は部下の甘さに気づき、課題を与え、成長するように促していく。気づきというのは、看護にとってもとても大切な部分でもあるので、気づいてフィードバックを心がけていきたいなと感じた。

戦友として働いていきたいから…

経営にかかわるような大事なことが報告されず 、問題が発覚したあとになって 「私は聞いていなかった 」と 、まるで自分には責任がないような言い方をする社長が 、最近はずいぶん目につくが 、私にいわせればそんなものは 、 「自分は経営トップとしての仕事をやっていません 。無能な社長です 」と宣言しているに等しい
これは部下を持つ全ての方にも当てはまるのかなと感じます。見てなかった、聞いていない、知らなかった、は言い訳にもならない。インシデントが起きる度にそう感じます。事故を起こさないように、より良い看護を提供するために。
オープンにされている情報はしっかり目を通し、自分の意見を持つ。みんながこうしてるから、じゃなく、根拠を持って。リーダーとして勤務帯で立っているときも、患者さんを受け持ちスタッフと同じくらい把握出来るように。
まだまだ自分の課題はあるし、スタッフを育てるために出来ることもあるな、と感じました。

吉越さんのご本は初めて読みましたが、この本は社長になりたい方限定ではなく、社会人になってまだ間もない方や仕事に不満を抱えている方も是非読んだら参考になる部分が多いのかなと感じました。